TPSコンサルと一般の業務改善コンサルの違い — どちらが自社に合うか
TPS(トヨタ生産方式)のコンサルは、モノと情報の流れを現場で見て、ムダと異常を仕組みで止めることから始めます。一般の業務改善コンサルは、業務の手順と組織、システムから入ることが多い進め方です。違いを5つの観点で整理し、自社の困りごとにどちらが合うかの選び方を書きます。
この記事の要点
- TPSのコンサルは、現場でモノと情報の流れを見て、ムダと異常を仕組みで止めることから始める。一般の業務改善コンサルは、業務の手順・組織・システムから入ることが多い。
- 困りごとが「現場の流れ・品質・段取り・在庫」ならTPSが、「間接部門の手順・システム導入・組織の役割分担」なら業務改善が出発点になる。両方が絡むことも多い。
- どちらを選ぶ場合も、看板より「誰が現場に来るか」「終わったあと社内で回るか」を初回の相談で確かめる。
「トヨタ式のコンサル」と「業務改善のコンサル」。どちらも会社をよくする支援ですが、出発点と進め方が違います。違いを知らずに頼むと、「現場を見てほしかったのに資料づくりが中心だった」「システムの話をしたかったのに現場の話ばかりだった」というずれが起きます。
この記事では、両者の違いを5つの観点で整理し、自社の困りごとにどちらが合うかの選び方を書きます。どちらが優れているかではなく、困りごとに合う入口を選ぶための記事です。
そもそもTPSとは
TPS(トヨタ生産方式)は、トヨタ自動車が築いた生産の考え方です。「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」つくることでムダを省き、異常があればすぐ止めて原因を直します。道具や手法の集まりというより、ムダと異常を、人に頼らず仕組みで止め続ける考え方です。
5つの観点で見る違い
| 観点 | TPSのコンサル | 一般の業務改善コンサル |
|---|---|---|
| 出発点 | 現場でモノと情報の流れを見る(現地現物) | 業務の手順、組織、システムの現状を聞き取る |
| 見る単位 | 工程・作業・モノの停滞(在庫・待ち・手直し) | 業務プロセス・部門・帳票・システム |
| 打ち手 | 流れをつくる、標準作業、段取り短縮、異常で止まる仕組み、見える化 | 業務の再設計、役割分担の見直し、システム導入、規程・ルールの整備 |
| 成果の測り方 | リードタイム、不良率、段取り時間、在庫、生産性 | 工数、処理時間、コスト、システム化の範囲 |
| 終わったあと残るもの | 現場が自分で改善を回す習慣と、それを支える標準 | 新しい業務手順、組織、システム |
出発点:現場か、業務の手順か
TPSのコンサルは、まず現場に立ちます。製品がどこで止まり、どこで手直しが起き、作業者がどこで探したり待ったりしているかを、自分の目で見ます。一般の業務改善コンサルは、関係者への聞き取りや業務フローの作成から入ることが多く、手順や組織の全体像をつかむのが得意です。
打ち手:仕組みで止めるか、手順を設計し直すか
TPSの打ち手は、現場の流れそのものを変えるものが中心です。段取り替えを短くする、作業を標準にする、異常が起きたら止まって呼ぶ仕組みをつくる、などです。業務改善の打ち手は、業務の手順や役割を設計し直し、必要ならシステムを入れるものが中心です。
残るもの:習慣か、新しい手順か
TPSの支援がうまくいくと、現場が自分で問題を見つけて直す習慣が残ります。業務改善の支援がうまくいくと、整理された業務手順と、それを支える組織やシステムが残ります。
自社にはどちらが合うか
困りごとから選ぶのが近道です。
| 困りごと | 出発点になりやすいのは |
|---|---|
| 不具合の流出が止まらない、監査に備えたい | TPS(品質を仕組みで止める) |
| 段取りが長い、少量多品種に追いつかない | TPS(段取り短縮・標準作業) |
| 在庫が多いのに欠品する、リードタイムが長い | TPS(流れをつくる) |
| 間接部門の手作業が多い、帳票が多すぎる | 業務改善(手順の再設計) |
| システムを入れたいが、何から決めればよいか分からない | 業務改善(要件の整理) |
| 部門の役割があいまいで、決められない | 業務改善(組織・役割の整理) |
実際には、両方が絡むことがよくあります。たとえば「設計変更が製造に伝わらない」は、現場の流れの問題でもあり、部門をまたぐ業務手順とシステムの問題でもあります。この場合は、現場で起きていることを先に見てから、手順とシステムを決める順番にすると、システムが現場に合わないという失敗を避けられます。
「トヨタ出身」だけで選ばない
TPSのコンサルを選ぶとき、「トヨタ出身」という経歴は一つの目安になります。ただし、それだけでは足りません。初回の相談で、次の点を確かめてください。
- 自社に近い現場での経験があるか:大量生産のラインと、少量多品種の加工現場では、同じTPSでも打ち手が違います。
- 実際に誰が現場に来るか:経歴の立派な人が提案だけして、現場には別の人が来ることがあります。
- 終わったあと、社内で回る形になるか:支援がなくなると元に戻る進め方では、費用が積み上がるだけです。
コンサル全般の選び方と費用の決まり方は、製造業のコンサルティング会社の選び方と、費用の決まり方にまとめています。
TPSが向いている支援の例
当社の記事から、TPSを出発点にした進め方の例を挙げます。
よくある質問
TPSは自動車業界以外でも使えますか。 使えます。ムダと異常を仕組みで止めるという考え方は、業種を問いません。ただし、大量生産の自動車ラインの手法をそのまま持ち込むと合わないことがあります。少量多品種や受注生産の現場に合わせて、打ち手を選び直す必要があります。
業務改善とTPS、両方を頼むことはできますか。 できます。両方が絡む困りごとでは、現場の流れを先に見て、そのうえで業務手順とシステムを決める順番がおすすめです。1社で両方を見られる支援先を選ぶか、役割を分けて頼むかは、困りごとの広さで決めます。
外部の支援は何をしてくれますか。 当社は、トヨタ自動車の生産調査部出身の代表が、TPSを土台に現場に入って支援します。現場改善・品質・段取りに加えて、業務の流れの整理やDXの進め方の整理も、現場を見たうえで一緒に進めます。
最初の一歩は、自社の困りごとを1つ選び、それが「現場の流れ」の問題か「業務の手順・組織・システム」の問題かを書き分けてみることです。どちらに近いかで、頼む相手の候補が決まります。用語の意味は用語集でも確認できます。