設計変更が製造・調達に伝わらない ― 情報の流れを描き直す
設計変更の連絡漏れは、担当者の注意不足ではなく、変更が「誰から誰へ、何の形で」流れるかが決まっていないことで起きます。PLMやSCMを入れる前に、変更の流れを一枚に描き、判断する人と伝える形を決めることから始めます。
設計変更が現場に届いていなかった。古い図面で加工していた。仕入先には誰も伝えていなかった。
こうしたことが起きると、「連絡を徹底しろ」という話になりがちです。しかし、注意で防げる回数には限りがあります。原因は人ではなく、変更が誰から誰へ、何の形で流れるかが決まっていないことにあります。
この記事では、PLMやSCMといった仕組みを入れる前に、まず何を決めるべきかを書きます。
「伝わらない」の中身を分ける
設計変更が伝わらない、と一言で言っても、起きていることは3種類あります。
| 種類 | 起きていること | 例 |
|---|---|---|
| 届いていない | 変更の連絡が、必要な人に届いていない | 仕入先に連絡が行っていない |
| 届いたが分からない | 届いたが、何が変わったか読み取れない | 図面が差し替わっただけで、変更点が書かれていない |
| 届いたが反映されない | 分かったが、現場の作業や在庫が切り替わらない | 旧図面の材料が残っており、そのまま使われた |
対策はそれぞれ違います。まず自社でどれが起きているかを、過去の事例で確かめてください。
最初にやること:変更の流れを一枚に描く
設計変更が発生してから、現場と仕入先で反映されるまでを、誰が・何を・どこに・どの順での形で一枚に描きます。
- 設計、生産技術、購買、品質、製造、そして仕入先を横に並べる
- 変更の起点(顧客要求、社内の不具合対策、コストダウン)から矢印を引く
- 矢印が途切れるところ、口頭や電話になっているところに印を付ける
描いてみると、変更の連絡が「設計者の記憶」や「担当者どうしの会話」に頼っている箇所が見えます。そこが直すべき場所です。
決めることは3つ
1. 変更を判断する人
すべての変更を同じ重さで扱うと、確認が追いつきません。顧客に影響する変更・工程に影響する変更・書類だけの変更のように分け、それぞれ誰が承認するかを決めます。
2. 伝える形
変更の内容を伝える型を一つに決めます。「何が・なぜ・いつから・どこまで(仕掛品、在庫、仕入先)」が入っていれば、メールでも紙でも構いません。変更点が書かれていない図面の差し替えは、伝えたことになりません。
3. 反映を確かめる人
伝えた後、現場と仕入先で切り替わったかを誰が確かめるかを決めます。旧図面の在庫の処置、仕入先の受領確認まで含めます。ここが抜けている会社が最も多い点です。
変化点管理とつなげる
設計変更は、品質管理でいう変化点そのものです。人・設備・材料・方法が変わった瞬間に不具合が起きやすい、という考え方の「方法」に当たります。
変更の流れを描いたら、製造の変化点管理の仕組みと接続します。変更後の初回ロットは検査を厚くする、変更を工程の掲示板に貼る、といった運用です。設計と製造で別々に管理していたものが、一本につながります。
PLM・SCMは「流れが決まってから」
流れと判断の型が決まっていない状態でPLMやSCMを導入すると、決まっていないことがそのままシステムの設定に持ち込まれます。導入後に「使われない」「例外処理ばかり」になる原因です。
順番は、流れを描く → 判断する人と伝える形を決める → 紙やExcelで回す → 回っている形をシステムに載せる。当社が構想策定を支援するときも、システム導入を前提にせず、業務の品質と標準の定義から始めます。
仕入先を最初から流れに入れる
変更の流れを社内で閉じて描くと、仕入先への伝達が「購買担当が個別に連絡」になりがちです。仕入先を最初から一枚の図に入れ、どの変更をどの形で通知し、受領をどう確かめるかを決めておきます。仕入先の側から見ても、変更の連絡が来るタイミングと形が決まっているほうが、対応しやすくなります。
よくある質問
設計者が少なく、承認の手順を増やすと回らなくなります。 変更を重さで分けるのは、手順を増やすためではなく減らすためです。書類だけの変更は設計者本人の判断で済ませ、顧客や工程に影響する変更だけを会議体に上げます。
顧客からの仕様変更が口頭で来ます。 受けた側で「何が・なぜ・いつから」の型に書き起こし、顧客に確認を返す運用にします。顧客の声を起点に整理することは、後の設計にも役立ちます。
外部の支援は何をしてくれますか。 当社の場合は、部門横断のワークショップで現状の流れを描き、顧客の声を起点にありたい姿を設計し、エンジニアリングチェーン・サプライチェーンの構想策定と、調達・生産・物流の連携設計を、一緒に進めます。
最初の一歩は、設計変更を1件選び、それが誰を経由して現場と仕入先に届いたかを、矢印で描いてみることです。途切れた矢印が、直すべき場所です。