補助金は「交付決定の前」がすべて ― 順番で損しないために
補助金や国の事業で一番多い失敗は、書類の不備ではなく順番の間違いです。交付決定の前に契約・発注した費用は、ほとんどの制度で対象外になります。改善のテーマを決めたら、発注の前に制度を確認する。この順番だけ守れば、大半の損は防げます。
「設備を入れてから補助金を知った」「申請が通る前に発注してしまった」。補助金や国の事業でいちばん多い失敗は、書類の書き方ではなく、順番の間違いです。
制度の細かい内容は年度ごとに変わります。ただ、順番に関する原則はほとんど変わりません。この記事では、制度を選ぶ前に知っておくべき順番と、確認すべき3つのことを書きます。
原則:交付決定の前に契約・発注した費用は対象外
多くの制度で、交付決定(採択後に「この内容で補助します」と正式に決まること)の前に契約・発注した費用は、対象外になります。採択の通知と交付決定は別のことがあり、採択で安心して発注すると、対象外になるケースがあります。
つまり順番は、改善のテーマを決める → 制度を確認する → 申請する → 交付決定を受ける → 契約・発注する → 実施する → 報告する。この流れのどこかで「先に発注」が入ると、そこから先が補助の対象から外れます。
制度を選ぶときに、最初に確認する3つ
1. 何に使う費用か
制度は、費用の種類で分かれています。
| 費用の種類 | 例 |
|---|---|
| 設備投資 | 機械、ライン、検査装置 |
| ITツールの導入 | 生産管理、在庫管理などのソフト |
| 人材育成 | 研修、実践型の育成プログラム |
| 専門家の活用 | 外部の指導、診断 |
自社が取り組みたいことが、どの費用の種類に当たるかを先に整理します。「DXをやりたい」だけでは、ITツールなのか人材育成なのか決まらず、制度も選べません。
2. 賃上げの計画を立てられるか
多くの制度で、賃金の引き上げが要件になっています。補助を受ける代わりに、従業員の賃金を一定の率で上げる計画を出し、達成できなければ返還を求められる制度もあります。
補助金の額だけを見て申請すると、あとで賃上げ要件に苦しむことになります。事業計画として賃上げが無理のない範囲かを、申請前に確かめてください。
3. スケジュールが合うか
公募の期間、交付決定までの期間、事業の実施期間、報告の期限が制度ごとに決まっています。「来月には設備を入れたい」という計画と、交付決定まで数か月かかる制度は、そもそも合いません。
急ぐ投資は補助金なしで進め、時間の余裕がある投資に制度を使う、という割り切りも必要です。
人材育成は「実践型」の制度が向いている
設備やITツールと違い、人材育成は「研修を受けて終わり」になりやすい分野です。近年は、自社の実際の課題をテーマに、社員が実践を通じて身につける形の事業が用意されています。
当社の代表は、厚生労働省の「デジタル人材育成のための『実践の場』開拓モデル事業」に、参加企業へ助言するアドバイザーとして登録しています。この事業では、支援者が作業を代行することはできず、論点の整理・進め方の助言・成果物のレビューで伴走する形になります。社内に推進者を育てたい会社には、この形が合っています。
申請書は「改善の計画」が先、「制度の要件」が後
補助金の申請書を、制度の様式から埋め始めると、要件に合わせて計画を歪めることになります。
先に、何を・なぜ・どう変えるか、それでどんな数字がどう変わるかを、自社の言葉で書きます。改善の計画が先にあれば、制度の様式には当てはめるだけです。この順番のほうが、採択後の実施も報告も楽になります。
よくある質問
申請書の作成を代行してもらえますか。 当社は申請書の作成代行は行いません。改善テーマの整理と、どの制度が合うかの確認、申請前に決めておくべき順番の確認をお手伝いします。
採択されたら、すぐ発注してよいですか。 制度によります。採択と交付決定が別になっている制度では、交付決定の通知を受けてから契約・発注してください。公募要領の「補助対象期間」の記載を必ず確認します。
制度の最新情報はどこで確認すればよいですか。 各制度の公募要領が正本です。年度ごとに内容が変わるため、前年の情報で判断しないでください。当社にご相談いただく場合も、最新の公募要領をもとに一緒に確認します。
制度の名前を探す前に、「何を変えたいか」と「いつまでに」を紙に書いてください。それが決まれば、使える制度は自然に絞れます。詳しくは公的支援の活用をご覧ください。